実践
9. 狩
〈ブルグミュラー25の練習曲より〉
この曲で学ぶこと
ロンド形式
ロンド形式:A-B-A-C-Aと、Aを挟んでBからCへと音楽が発展していく形式
ソナタの第3楽章(終楽章)に使われることが多い形式
音による情景描写


ロンド形式とは
上記のとおり、ロンド形式とは「A-B-A-C-A」と、Aを繰り返しながらB、C、と音楽が発展していく形式です。ソナタの第3楽章(終楽章)など軽快な音楽に用いられることが多いです。
【A】
Aを繰り返すため、Aが音楽の軸となります。「狩」では以下の部分がAになります。

弾き方:
まず、Aを譜読みしていきます。
原則、毎回同じテンポ、同じ音量、同じタッチで繰り返します。
くどいですが必ず楽譜どおりに弾きます。
※8小節目の記号はデクレッシェンドです。(長いアクセントではありません)
Aはたいてい、シンプルなつくりになっています。BやCで音楽の色合い、ドラマ性が濃くなり、シンプルなAに戻すことで曲としてのバランスをとる感じです。
【B】
Bは初めて音楽が動く箇所です。以下の部分がBになります。

弾き方:
半音階が多く使われています(左手)
半音階は,不安な感情を表すのによく使われる音の並びです。
また,agitato(煽るように)という,感情的な楽語記号も見えます。
Bの2小節目(14小節目)の記号は長いアクセントです。
17小節目からは長いクレッシェンドcresc.があり,20小節目のあたままでクレッシェンドし続けます。20小節目2拍目以降はフレーズ・オフで自然なデクレッシェンドを施します。ただし,rit.やriten.といった指示はないので,テンポは落とさずに先に行きます。
【C】
Bからさらに状況が動いています。何があったのでしょう……悲しげですね。
弾き方:
右手は1小節ごと(音2つごと)にスラーがかけられています。ここははっきりフレーズを分けます。泣いているような表現になることがわかります。
左手は悲しさを表す音の並びになっています。(短三和音の分散和音)
Cの2小節目(29小節目)の記号は長いアクセントです。
そして、楽譜に明記されない「暗黙の了解」的な読み方になるのですが、Cの最後の小節はB〜Cのドラマの終わるところで「段落の終わり」にあたり、自然なリタルダンドがあります。

【IntroとCoda】
IntroとCodaは同じような造りであることがわかります。
そして,CodaはIntroの大きなQ(問い)に対する大きなA(答え)であることも読み取れます。
Intro

Coda

音による情景描写
音による表現,音による情景描写は,ピアノ演奏の醍醐味であります。
「狩」というタイトルとこの音楽から,できる限りの情景を思い浮かべてみます。
狩り場にやってくるIntro,狩を終えて帰る道のCoda。
狩り場はどんな場所でしょう。
森,林,丘,草原,等々……
そこには誰がいるでしょう。
狩人,馬,猟犬……
そこには何があるでしょう。
鉄砲、獲物、合図の角笛……
そしてAの情景を具体的に描き,BとCのストーリーを考えます。
絵画を、絵筆と絵の具で描くように、情景を指先のタッチと音で描いてみましょう。
正解はありません。「狩」というテーマから自由に想像し、音づくりをしてみます。
楽譜に書き込まれた記号は最大のヒントです。
正確に読み取り、音にしていきます。
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