
メカニズム
2. 姿勢・重力・脱力
姿勢
1. ピアノに向かい,椅子にやや深めに座ります
2. 下腹部にある臍下丹田(せいかたんでん)を見つけます
臍下丹田(以後「丹田」)とは下腹部の奥にあるツボのような点で,体の軸、動きの軸となる箇所です。東洋医学でよく用いられ,生命の源、気の流れを整える経絡の中心ともいわれています。舞台芸術や武道でも活用され,ここでも丹田の機能を活用していきます。
丹田の見つけ方:椅子に座ったら,太ももをお腹の方へ引き寄せ,足を床から浮かせます。お腹が少し引き締まります。そのまま体を緩めず,お尻を軸に上体を左右に大きく揺さぶります。何度か振ったら前後にも大きく振ります。できるだけ両足は床から浮かせたまま行います。
下腹部の低い位置(太ももの付け根くらい)の中央あたりに腹筋をまとめ上げるように力がクッとこもる箇所があるのがわかれば,そこが丹田です。

脱力
丹田が見つかったら,上体を軽く立て,両腕をだらんとたらします。
腕の重みを感じ取りながら,肩から腕,肘,手首,手,指まで,どこにも筋緊張が入っていないことを確かめます。
基本ポジション
確かめたら、両手を持ち上げて指先を軽く鍵盤にのせます。
このときも、上腕にも前腕にも必要以上の筋緊張が入っていないこと、手首から先にも筋緊張が入っていないことを確かめます。
この〈筋緊張の入っていない状態〉が手の基本ポジションになります。
この状態を体と脳に記憶させます。
もし、弾いているときに肘がりきんでいる(=筋緊張が入っている)と感じたら手を止め、両腕をたらし、基本ポジションに立ち返ります。
なぜ脱力が必要か
ピアノを操作するときは腕の重みと重力を活用します。
打鍵においても、ペダル操作においても、重力をフル活用します。
筋緊張が入っていると、重みの伝達を止めてしまうのです。
なぜ重力か
筋肉の動きだけで操作するには鍵盤は重すぎ、幅が広過ぎ、楽曲は長過ぎ、ピアノ本来の音を引き出すことも上質な演奏をすることも困難です。
重力を活用することで、長時間の打鍵も、長い距離の跳躍も、素速い動きも可能になります。また、ピアノの最大音量も、最小音量も、その調節も、自在に操れるようになります。