当サイトへお越しくださり,また,この「ショパンブログ」のページにご来訪くださりありがとうございます。ここでは,日本では語られることの少ないワルシャワ時代のショパンにまつわるエピソードを中心に書いていきたいと思います。

以前よりわたしは,わたしたちのショパンについての知識はいったんリセットした方が良いのではないか,と考えていました。それは,ショパンのピアノメソッドを深堀していくうち,実際のショパンはわたしたちが教えられてきたショパン像とはかなり食い違いがあることに気づいたからです。
ショパンが書いたピアノメソッド……これはわたしにあらゆる切り札を与えた完璧な音楽メソッドですが,このメソッドの文面にはわたしたちが持つ,感傷的で移ろいやすく病弱なショパンのイメージがありません。あるのは,冷静な理論家,鉄のように曲がらない中心軸,確かな科学的知識,そして高度な教養です。

『弟子から見たショパン』(音楽之友社)の中に,テンポ・ルバートについて書かれた箇所があります。テンポ・ルバートとはテンポを揺らすこと,とわたしたちの多くが考えています。楽曲の中の感傷に満ちた旋律や和声の箇所で,ふと立ち止まって思いを込めて「特別にたっぷり目に奏でる」ことであると。しかしこの著書によると,ショパンにとってのテンポルバートとは,柱時計のように正確にビートを刻む左手の上に,自由に歌う右手の旋律を意味するようです。
フレージングについて書かれた箇所では,フレーズを奏でる際の規則が厳格に明示されています。そう,フレージングは感性や感情ではなく,「規則」なのです。
ピアノを演奏する際,非常に重要で助けになるこういった文言に,ショパンにまつわる感傷的なイメージを持ったまま対峙すると,真意が読み取れず大事な言葉を見落としてしまう,それどころか,今とは時代が違う,弾くピアノの機能も違うといった言い訳めいたものまで湧き出でる……

ワルシャワ時代のショパン,ショパン時代のワルシャワ。
ショパンが生まれ育ち,教育を受け,ショパンの知性の土台が形成された時代と街。
ここを知ることはショパンの音楽の核心を知ることでもあります。そしてショパンの実像を知ることは,音楽そのものを知ることでもあると,わたしは考えます。

ショパンのピアノメソッドは『弟子から見たショパン そのピアノ教育法と演奏美学』(ジャン=ジャック・エイゲルディンゲル著/音楽之友社)に掲載されています。
また,拙著『ショパン、ピアノメソッドとエチュード -Chopin, Méthode de Piano et Études』にも当方の翻訳によるピアノメソッドを掲載しています。『弟子から見たショパン』で幾分翻訳があいまいだった箇所を,ピアノでの動作確認を重ねた上で明確な訳を与えたものになります。こちらにはショパンのエチュードOp.10と25の手稿から採譜した楽譜を合わせて掲載しています。(ノータジェーナスクールで使用する教材になります)

今後ともどうぞよろしくお願いいたします。